吉沢亮「PICU-小児集中治療室」医者は万能のヒーローではない
この秋、複数の医療ドラマが放送されている。
「祈りのカルテ-研修医の謎解き診察記録」(日本テレビ系)、「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日系)などだ。ただし、天才外科医やスーパードクターは登場しない。医療現場が抱える課題も踏まえた、現実感のある人間ドラマになっている。
吉沢亮(写真)主演「PICU-小児集中治療室」(フジテレビ系)もそんな一本だ。舞台は札幌の「丘珠(おかだま)病院」。新米小児科医の志子田武四郎(吉沢)は、植野元(安田顕)が立ち上げたPICUに参加している。
先日は呼吸器系のウイルスに感染した赤ちゃんが救急搬送されてきた。母親は20歳の大学生で、乳児院に預けたままだ。武四郎は会いに来るよう伝えるが、拒否される。悩んだ末、自身も子供を失った経験を持つ救命医、綿貫りさ(木村文乃)に頼んで説得してもらった。このドラマは武四郎の成長物語でもある。
また、交通事故で肋骨(ろっこつ)が折れ、肺を損傷した少年がいた。植野は右肺の全摘出を決めるが、武四郎は抵抗する。子どもの将来が狭まってしまうと考えたからだ。結局、肺を生かす形での治療が行われた。未熟な青年医師だからこそ、見えるものもあるのだ。
医者は万能のヒーローではない。悩みながら最善の治療を目指している。本作のような、愚直に患者に寄り添う医者たちのドラマがあっていい。