10周年を迎えた「孤独のグルメ」この不変のパターンがたまらない
2012年にスタートした「孤独のグルメ」(テレビ東京系)。10周年の今回は、ついに「Season10」だ。めでたい!
主人公は、個人で輸入雑貨を扱っている井之頭五郎(松重豊)。商談で訪れるさまざまな町に「実在」する食べ物屋で、「架空」の人物である五郎が食事をする。そんな「ドキュメンタリードラマ」の基本構造は、ずっと変わっていない。
先週は東京の渋谷区笹塚にある店だった。そば屋なのに、なぜかメニューには沖縄に傾倒した品が並ぶ。「しからば、揺さぶられてやろう」と五郎。注文したのは「とまとカレーつけそば」だ。食べながら「うーん、初めてなのに、これは俺が食べたかったものだ」と心の声を発する。無用なウンチクや解説に走らず、ひたすら実感だけを独白していく。この不変のパターンがたまらない。
このドラマ、10年の間に「食ドラマ」というジャンルを広めてきた。いや、それだけではない。「ひとり飯」自体を一種の文化にまで高めた。その功績も大きい。しかも、多くの後続番組が「孤独のグルメ」との差別化に腐心する一方で、元祖は堂々の「いつも通り」を貫いている。
新シーズンでも、そこにいるのは孤高の「ひとり飯のプロ」だ。食への「好奇心」、食に対する「遊び心」、そして食への「感謝の気持ち」。この3つがある限り、井之頭五郎は永遠だ。