これで演じ納め…一世一代の「霊験亀山鉾」で示す片岡仁左衛門の美学

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「三人吉三」はバランスのいい配役

 第1部は尾上松緑・片岡愛之助中村七之助で、河竹黙阿弥の「三人吉三巴白浪」。3部制という時間的な制約からか、完全な通しではないが、最後まで物語はつなげてある。

 和尚は松緑、お坊は愛之助、お嬢は七之助で、それぞれ何度もこの役を演じているが、3人で組むのは初めて。それぞれ違う一門の出身だが、息が合い、バランスのとれた配役となっている。

 なかでも際立つのは七之助だ。序幕から、黙阿弥世界の闇と退廃を感じさせる。女になりすましている男を、女形の役者(男)が演じるという、何重もの倒錯を的確に演じている。愛之助は、お坊と呼ばれるのにふさわしい、いい意味でのひ弱さと朴訥さがにじみ出る。松緑の和尚は貫禄が出てきた。この3人での完全な通しでの上演を期待したい。

 第2部は中村富十郎の13回忌追善で、「船弁慶」を子の中村鷹之資がつとめる。高齢になってからの子だったので、鷹之資が父から直接習った機会はほとんどないはずだが、その芸を引き継ごうとしている。又五郎、扇雀、松緑らがそれを支えるひと幕となった。

(作家・中川右介)

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