27歳の元売れっ子芸妓と結婚 「こんな落語家でいいの?」と確認したら「それでもいい」と
歌武蔵と夫人の出会いは2年前のことだ。
「ご贔屓のお客さまが東京へいらして食事をご一緒した際、東京に遊びに来ていた今の嫁を連れて紹介してくれたんです。京都で映画製作をしていた方なんで、馴染みの芸妓だったんですね。すでに芸妓はやめてました。27歳なんて娘みたいな年ですから、付き合いたいという気はありません。それから1カ月もたたない3月、名古屋で落語会があって、前の晩に例のご贔屓が岐阜の料亭に招待してくれました。
『ちょっと早いけど、師匠の誕生祝いをしよう。お祝いの座興だよ』と言って座敷の襖が開いたら、そこに着物姿の彼女がいて、お能で使う横笛、能管で僕の出囃子の『勧進帳』を吹いた。藤舎流の名取だけあって、見事な音色でした。その夜、実家の仏壇にお線香をあげに行くのに、『近所だけど、君も来る?』って聞いたら『行きます』と付いてきて、仏壇に手を合わせてくれた。ああ、いい子だなあと思いました」
それがきっかけで、交際に発展したわけだ。
「市知という座敷名の芸妓時代はたいへんな売れっ子で、20歳で京都市内に家を建てたといいます。初めて会ってからちょうど1年後、昨年の2月、プロポーズしました。承知してくれたのが信じられなくて、『本当に僕でいいの?』と4回も確認したほどです。『54で、糖尿病だし、コロナで仕事も減ってる。そんな落語家でいいの?』って(笑)。『それでもいい』と言うんです」
なんともすてきなプロポーズではないか。