ファッションデザイナー鳥居ユキさんの「生きる糧」…パリの蚤の市からお酒、男のファッションまで

公開日: 更新日:

鳥居ユキさん(ファッションデザイナー・80歳)

 今も世界で活躍するファッションデザイナーの鳥居ユキさん。2022年にはデザイナー生活60周年を迎え、先月には「80歳、ハッピーに生きる80の言葉」(主婦と生活社)を上梓した。これまで生きる糧にしてきたことについてお話をうかがった。

  ◇  ◇  ◇

 鳥居家は祖母が創業したのが1950年、「銀座トリヰ」は今年で73年、母、私と受け継がれてきました。

 みんな好き勝手にやってきましたからね。家訓なんていうのはないわよ(笑)。あるとしたら、母も私もお世話になった文化学院の西村伊作先生からはいろいろなことを教わりました。例えば、「人にこうしてほしいと望むからこころが疲れる」とか。

 だから、母から何かを強要されたりしたことは、一度もありませんでした。

 デザイナーとしてデビューしたのは19歳だった62年です。75年にパリコレデビューし、08年まではパリでも毎年2回コレクションを発表してきました。

 やっぱりパリが好きですね。ヨーロッパの他の国に行っても、パリにすぐ帰りたくなる、パリに戻りたくなっちゃうの(笑)。

 当時は、パリにも日本人を小ばかにしている感じの人がいっぱいいました。でも、そういう偏屈な人はどこに行ってもいるでしょ。人間関係はフランスも日本も変わらないし、フランス人は親しくなると日本人より日本的で家族みたいに接してくれます。

 個人主義、マイペースという部分はあるでしょうけど、それは適度に人の生活を侵さないということでもあるし。私は仕事もプライベートもそのお互いのいいとこ取りでやってきました。

 フランス人は日本人のきちょうめんなところはよくマネします。逆に日本人と異なるのは絶対に「ごめんなさい」を言わないことですね。

 パリではクリニャンクールの蚤の市にはよく通っていました。買いたいなと思いながら毎日通っていたら、値引きしてくれたり(笑)。テーマを決めて探すのも面白いですよ。例えば、毎回お皿をひとつずつ買って帰ってくるとか。買いたいものがあると、私が何回も何回も通うから、主人と娘に「お金を出すから、お願いだから早く買って」と言われたこともあります(笑)。

 日本がいいのは四季があることですね。庭のお手入れは楽しみのひとつです。ただ、最近は四季がなくなってきて、いつ葉っぱを切ったらいいのかタイミングがわからなくなることがあるのね。この間、切ったと思っていたら、すぐ育ってもう一回切っておかないと、とか。

 剪定はこの枝とこの枝をこうつなげたいというイメージで。高枝切りバサミを使ってやってますよ。植木屋さんに頼むと私が好きな感じとちょっと違うのよね。棒の先にフックをつけて切りたい枝をキュッと持ってきて、お手伝いさんに切ってもらうの。

■自宅はメモでいっぱい、気がついたら何でも書く

 欠かさないのはメモをとることですね。家中、お風呂場にもどこにもメモ用紙を置いています。気がついた時に書かないと忘れますからね。会社のことやお客さんのこと、身の回りのこと、気がついたら何でも書く。夜中に書いた、枕元のメモは解読不可能なこともあります(笑)。メモしたものは全部実行するようにしています。

 朝起きた時のローテーション。まずカーテンを開けて空気を入れ替えること。それから亡くなった主人(高雄さん)にお水をあげる。私が水を飲みたいように、高雄さんもお水を飲みたいんじゃないかなと思って。私を大切にし、支えてくれたことには感謝しています。

 でも、今のマンション生活だとスペースの問題もあるから、お仏壇を入れてというのは難しいかもしれないわね。大切な人を亡くされた方はお仏壇じゃなくて、代わりにちょっとした祭壇をつくってあげればいいんじゃないかしら。なにもなくても心で拝んでいれば、いいと思います。私は最初は庭から切った生花を飾っていました。ようやく百日紅が咲きましたといった感じで。でも、この暑さだと生花は大変ですから、一部を造花にしています。それでいいと思っています。

 会社でもテーブルに祭壇をつくって、写真やお花を飾っていますよ。

 食事ですか。思い出すのはやっぱりパリにいる時ですね。朝はスタッフと7時くらいに好きなバゲットを買いに行きます。パセリを入れた卵料理とか、それとミルクをたっぷり入れた紅茶を用意してみんなで食べる。お昼はマルシェに好きなものを買いに行ったり、ポトフは大量につくっておいたりします。夜はそれにソーセージを加えて、ご飯を入れてお雑炊にして食べるとか。向こうにいる時は忙しいですからね。

 今も必ず食べるのはナッツ類です。できるだけナチュラルで塩分がないものを選びます。例えば、長野からシンプルなものを取り寄せる、築地の魚屋さんで売っているものもありますよ。何種類かを仕事の合間、毎日11時ごろに食べています。

 お酒は飲みますが、ワインは飲みません。足が膨らんだ時があって、先生に診てもらったら「むくんでいる」って。フランス人みたいになっちゃった(笑)。それからは焼酎に飽きると日本酒という具合に変わりました。焼酎は昔は飲めなかったけど、梅干しを入れたら飲めるようになりました。飲むといっても、週1回程度ですけどね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議