キンプリ永瀬廉主演「法廷遊戯」は司法制度の問題点を照射した秀逸な人間ドラマ

公開日: 更新日:

 現在公開中の映画「法廷遊戯」(深川栄洋監督)が注目を集めている。ある殺人事件を巡って想像もつかなかったような過去の悲劇が暴き出される骨太のリーガルサスペンス映画だ。ここでは「どんでん返し」で見る者をアッと言わせる裁判映画を紹介しよう。

「法廷遊戯」の主役は、当代一の人気アイドルKing & Princeの永瀬廉。抑制をきかせた演技で繊細な青年の心のひだを見事に演じ切っている。その友人役をNHK連続テレビ小説「おちょやん」(2020~21年)の杉咲花(父親は元レベッカのギタリスト木暮武彦氏)、「東京リベンジャーズ」や「とんかつDJアゲ太郎」の北村匠海が固める布陣だ。柄本明や筒井道隆の演技も渋い。

 伏線となるのは法科大学院生の余興という設定の裁判ごっこ「無辜(むこ)ゲーム」。無辜とは罪がない者を言う。ロビン・ウィリアムズ主演「いまを生きる」(ピーター・ウィアー監督、1989年)は規律が厳しい名門高校で魂の自由を希求するクラブ「デッド・ポエッツ・ソサエティ」を描いたが、本作での「無辜ゲーム」は同じ秘密結社的なにおいを感じさせながらも、「罪と罰」を巡る重い雰囲気に包まれる。児童福祉施設の闇が暴かれ、永瀬廉と杉咲花そして北村匠海が抱える過去の悲劇が静かに浮かび上がっていく。原作は五十嵐律人「法廷遊戯」(講談社)、脚本は松田沙也。永瀬廉の熱心なファンを中心に「複数回鑑賞スタイル」が生まれ、興行収入上位にランキングされた。

「法廷遊戯」では、普段あまり知られることのない裁判員裁判や冤罪、法科大学院の姿などが描かれる。この点について映画通の某国会議員X氏は「2001年以降の司法制度改革は裁判員裁判や法科大学院を導入しましたが、期待された成果を挙げているとは言い難いという評価もあります。この映画はそうした司法制度あるいは児童性虐待といった問題も描いており、主人公ら3人それぞれの視点から観ると違う風景が見えてくる傑作です」と激賞する。

 理知的な裁判長を演じた宮澤美保は深川監督の配偶者で、「櫻の園」(中原俊監督、1990年)の「優等生」役を思い出させるハマり役。「そのショットには愛を感じますね」とのことだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  1. 6

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  5. 10

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  2. 2

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    巨人・田中将大“魔改造”は道険しく…他球団スコアラー「明らかに出力不足」「ローテ入りのイメージなし」

  5. 5

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…

  3. 8

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  4. 9

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  5. 10

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…