さようなら俳優座劇場最終公演「嵐 THE TEMPEST」は混迷が続く今の世界と通底する悲喜劇

公開日: 更新日:

 物語はエアリエルの力ですべての暗殺計画は未遂に終わり、プロスペローは娘を王子と結婚させ、アントーニオとも和解する大団円で幕を閉じる。暗殺者たちにざんげの気持ちや謝罪がまったくないのに、すべての行いを赦(ゆる)そうとするプロスペローの姿が示すのは憎しみの連鎖を止めるには「無限の赦し」を必要とすることだ。

 劇団俳優座が俳優座劇場最後の公演に同じくシェークスピアの「リア王」を翻案した「慟哭のリア」を上演したが、2つの作品は、「復讐=悲劇」と「赦し=喜劇」という対をなすものだ。

 プロスペローが支配した孤島は当時のイギリスの植民地の比喩であり、エアリエル、キャリバンを解放したのは、植民地の解放と読める。プロスペローは最後にこう言って客席に拍手を求める。

「祈りの助けがこの身に必要。それがなければ終わりはただの絶望。祈りは神の慈悲を引き出し、過ちすべて、はるかかなたに……」

 混乱と戦禍が続く今の世界にシェークスピアの言葉が二重写しになる。


 シェークスピアの時代から400年。俳優座劇場が「テンペスト」が掲げる世界の協調・融和という理想を最後の舞台に乗せたことは意義深い。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  5. 5

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  1. 6

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  2. 7

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 8

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  4. 9

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  5. 10

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  4. 4

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  5. 5

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    ダウンタウン「サブスク配信」の打算と勝算……地上波テレビ“締め出し”からの逆転はあるか?

  3. 8

    1泊3000円! 新潟県燕市のゲーセン付き格安ホテル「公楽園」に息づく“昭和の遊び心”

  4. 9

    永野芽郁と橋本環奈…"元清純派"の2人でダメージが大きいのはどっち? 二股不倫とパワハラ&キス

  5. 10

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ