ひとつの時代の終わりを告げた唐十郎の逝去…演劇界の2024年を振り返る
今年は各界の著名人の訃報が多かったが、演劇界ではアングラ演劇の巨星・唐十郎(享年84=写真)と小劇場演劇界の異才・天野天街(同64)の相次ぐ死が惜しまれた。
唐は1967年に新宿・花園神社に状況劇場、通称紅(あか)テントをひっさげて登場。役者の個性に重きを置く独自の「特権的肉体論」は旧態依然とした新劇に大きな衝撃を与え、寺山修司の「天井桟敷」、鈴木忠志の「早稲田小劇場」、佐藤信の「黒テント」と共に4大アングラ劇団のひとつとして華々しく活動した。新宿中央公園での警官隊に包囲されながらの無許可公演(69年)、また、戒厳令下の韓国、バングラデシュ、シリア、パレスチナ難民キャンプ(72~74年)など、世界の紛争地域でのゲリラ公演を敢行し、演劇を「事件」にした。
戦後の現代演劇は「唐以前、唐以降」に分けられると言っても過言ではない。
亡くなった5月4日は唐が終生、「兄貴」と慕った寺山修司の命日であり、主宰する唐組公演「泥人魚」の花園神社公演初日前日という不思議な巡り合わせだった。