本橋信宏<前編>「AVの帝王」村西とおる監督を最も知る男
著述家・ノンフィクションライター。ジャンルはアダルトビデオ関連書から政治思想、サブカルチャーに及ぶ。早稲田大学政経学部卒業後、間もなくジャーナリストを目指していたがAV監督・村西とおると運命的な出会いで、ある意味数奇な人生を歩む。当時裏本で大金を手にしていた村西は新英出版を起業し、26歳の本橋は新雑誌の編集長に就任したものの、拡大商法のために倒産、わずか半年で廃刊、村西は逮捕。だが保釈後、AVメーカーの監督に返り咲いた村西に呼ばれ、広報宣伝担当に。村西の下、顔面シャワー、駅弁ファック、横浜国大生・黒木香が絶頂に達するとホラ貝を吹かせるなどの新基軸で栄華を極めた。その後、本橋氏は文筆活動を再開、全学連や不倫する人妻、AV女優へのインタビューなど幅広く執筆。村西のつくったダイヤモンド映像では経営が傾く1991年まで手伝う。村西に一番詳しい人物である。
2016年に発表した「全裸監督 村西とおる伝」は格段のレベルでそのページ数も尋常ではなく、講談社ノンフィクション賞の候補として最後まで選考に残った。前科7犯、借金50億、米国司法当局から懲役370年を求刑された「AVの帝王」と呼ばれた男の半生を描いたノンフィクションは自らの人生を振り回されてきた本橋氏ならではの筆致だった。