<1>惜しげなく身をさらす「特出し」伝説の踊り子引退公演
沖縄の本土復帰(1972年5月15日)直前、一人のストリッパーの引退公演が大阪で開かれた。初代一条さゆり。惜しげもなく身をさらす「特出し」で、伝説となった踊り子である。
宣伝用の赤いチラシには、「沖縄返還本土復帰記念特別出演」と印刷されたものもあった。ストリップと沖縄復帰。戦後日本を象徴する2本の糸が大阪で交差している。
劇場支配人をするなど25年間、ストリップ業界に身を置いた一色凉太(79)はこの公演の目撃者である。公演3日目の5月3日、吉野ミュージック劇場(大阪市福島区=168席)だった。
「開演の1時間以上前に行ったら、もう満席でした」
すでに場内は熱気で蒸し返り、北海道からわざわざ飛行機でやって来た客もいた。
一色は当時、東京に暮らしながら、踊り子と2人で全国のキャバレーを回っていた。一条の公演を偶然知って出掛けた。初夏らしい陽気の朝だった。
「東京では見られない『特出し』です。公演中に(公然わいせつで)パクら(逮捕さ)れるという噂もあり、最後にその芸を拝ませてもらおうと思ってね」