<1>惜しげなく身をさらす「特出し」伝説の踊り子引退公演
東京大学講師の駒田信二がこの前年、彼女を題材に小説を書いたことで、一条への社会的関心が高まり、彼女一人でレズビアンショー5組をしのぐ客を集めるといわれた。
この直前に人気女優、藤純子が引退を表明しているが、「一条引退」はある層にとって、「藤引退」以上の衝撃だった。そのため引退公演の入場料は2500円と跳ね上がった。現在の価値にして約1万円になる。
一色が後方席で待つこと約1時間。最初の踊り子が登場した。若いダンサーが長襦袢姿で踊り、最後に陰部を披露して引っ込んだ。その後、次々と踊り子が裸を見せ、8番目のレズビアンショーまで、舞台の女性たちは例外なく陰部を見せていた。
一色が言う通り、東京の劇場では当時、警察の目を恐れ、陰部まで披露することは少なかった。女性たちが次々と開いていく姿を見ながら、一色は「さすが大阪だな」と思った。そして、トリの一条である。司会の男性がこう紹介した。
「以前のストリップはあそこをちらちらと見せる程度でした。これではお客さんを満足させることはできません。勇気を出して自分のあそこを開いて見せた最初の人が、この一条さゆりです。勇気ある人が引退するのは非常に残念です」