怒鳴ったらダメ 認知症の親との距離感、つき合い方
■幸せな認知症介護
新井平伊教授の外来には、認知症の患者さんの診察に臨床心理士も同席する。臨床心理士の戸田愛子氏に、認知症の患者さんと家族が上手に寄り添いながら生きている印象的なエピソードを聞いた――。
認知症の中期の段階で、近所の植木を蹴飛ばしたり荒らしたりする患者さんがいらっしゃいました。
当時子供たちは20歳前後。奥さんは反抗期だった子供たちに「お父さんは悪くない」と繰り返し諭し、仕事と介護と子育てで大変な苦労をされていたにもかかわらず、認知症の家族会で知り合ったご家族を自宅に招いて慰めるなどしていました。
重度に進行してからは、暴れるなどの行為は治まりました。奥さんはショートステイやデイサービス、リハビリなどを活用しながら在宅介護を続け、一方で仕事を辞め、結婚前の趣味を生かした活動をされています。独立し結婚した子供たちは、孫を連れて頻繁に実家を訪れ、介護を手伝っています。
認知症の患者さんの介護は、初期や中期など段階において問題が変わります。ひとりで抱え込まずに、社会や地域支援を活用することによって、ポジティブな連鎖が生まれると思っています。