塩分控えめ「機能性塩」使用を注意しなければならない人
元財団法人塩事業センター海水総合研究所所長の橋本壽夫氏が言う。
「カリウムは主に腎臓で排泄されるため、腎臓の機能が低下している人はカリウムが排泄できず高カリウム血症になる恐れがあるからです」
人間は37兆個の細胞からできていて、細胞内にある液体を細胞内液といい、外部の液体を細胞外液という。細胞内液には細胞が独立して生きていくうえで必要な水分や成分があり、外液は血漿や関節の潤滑剤である組織間液、リンパ液、唾液、涙、汗などをいう。
ナトリウムとカリウムは水に溶けるとイオンとなり、それぞれの濃度は細胞外液ではナトリウムイオンが、細胞内液ではカリウムイオンが高くなる。細胞膜はそれらの濃度を調整する機能があり細胞内外の老廃物や栄養などを行き来させている。
高カリウム血症とは細胞外液のカリウム濃度が高くなった状態を指す。高カリウム血症が起きると、四肢のしびれ、弛緩性麻痺などが起きるほか不整脈を経て心臓が停止することがある。
実際、動物の薬殺にはカリウム注射が使われる。阪神・淡路大震災では、長時間家屋の下敷きになったものの外傷もなく無事に助け出された被災者が病院に収容された後、相次いで突然心臓が止まってしまう出来事が起きた。後の調査で「クラッシュシンドローム(挫滅外傷症候群)」と呼ばれる病態であることが判明した。物の下敷きとなり細胞が破壊されて細胞内のカリウムが大量に放出、心臓を直撃したという。今では災害時のトリアージ(患者の重症度に基づいて治療の優先度を決めて選別すること)では、元気で助け出された人でも物の下敷きになった人は最優先に治療されるようになった。それほど過剰なカリウムは恐ろしいのだ。