元祖「神の手」先輩医師との出会いが新たな挑戦へ駆り立てた
自分が今いる世界からフェードアウトするのは、いつでも簡単にできます。シンプルに手術をやめてしまえばいいからです。たとえば、毎週平日にゴルフに行く生活パターンにしてしまえば、手術はやらなくて済むようになります。趣味に没頭している間は手術について考えることなく、忘れることができます。周囲に「その日は自分の時間だから」と伝えておけば、医局から連絡が来ることもありません。新たな挑戦に踏み出すよりも、はるかに簡単です。
しかし、自分が仰ぎ見る福島先生のような大先輩が、より先を目指してスタスタと進んでいる。その姿を見るだけで、「自分もそんなふうにさらに進んでいかなければいけないのではないか」と思わされます。そして、「自分もできるかもしれない」という思いが湧き上がり、新たな挑戦に向かわせるのです。
また、自分が新たな挑戦に取り組むことは、自分の部下にあたる後輩医師たちをさらに成長させるために必要だという考えもあります。教授という立場の私がこれまでと同じやり方を続けて結果を出していれば、後輩たちは「これでいいんだな」と思ってしまいます。