元祖「神の手」先輩医師との出会いが新たな挑戦へ駆り立てた
それではさらなる成長は見込めませんし、いずれジリ貧になってしまうでしょう。
しかし、上長である私が新しいものに挑戦する姿勢を見せれば、後輩たちは「自分たちも常に新しい挑戦に取り組まなければいけないんだ」という意識を持ちます。昔からよく言われますが、後輩は先輩の背中を見て育つのです。
■後輩に任せる部分を作ることも大事
ほかに後進育成のために心がけているのは、「責任を振り分ける」ということです。私は50歳くらいの頃までは、自分ですべてを背負い込んでいました。
それでは後輩たちの中に「あの人のマネをしてればいいや」という意識が芽生えてしまいます。しかし、あれは彼に任せる、これは彼に任せる……と責任を分担すれば、彼らが目指す方向性や選択肢が増えることになります。
ですから、今は「自分はやらないから、君がやってくれ」というスタイルで、メインで取り組む治療を振り分けています。たとえば、大動脈瘤に対する「ステントグラフト内挿術」がそうでした。ステントグラフトと呼ばれる中にバネを入れた人工血管を動脈瘤部分に留置して破裂を防ぐ治療法です。すべて後輩に任せることにして、自分は今もまったくタッチしていません。