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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

研究は進むが…AIを使った診断と治療にはまだ課題が残る

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 医療分野でAIが本格的に広まるためには、患者さんの心構えも必要です。今年6月から、がん細胞の遺伝子を調べる「がん遺伝子パネル検査」が一部保険適用になり、これからデータがどんどん蓄積されてきます。近い将来、そのデータをベースに、どの医療機関でも使えるような巨大なAI搭載のコンピューターに分析・判断をさせて、「この患者さんは○歳になった時点でがんになる確率が○%」といった数字がはじき出されるようになるでしょう。

 そうなったときに備え、患者さんは「自分ならばどうしたいのか」を考えておかなければなりません。たとえば、仮に「5年後に乳がんになる確率が85%」だと診断されたとします。その場合、予防のための治療を受けたいと考える人もいるでしょう。しかし、まだ発病していないため、手術などの治療は保険診療として認められません。がん遺伝子検査は保険で認められているのに、そこからはじき出された回答から導かれる治療は保険適用されないままでいいのか。こうした議論もまだ成熟していないのです。

 ゲノム診断で乳がんリスクが高いとわかったハリウッド女優は予防のために乳房を切除しましたが、そこまで金銭的に余裕がある人は多くないでしょう。となると、がんリスクが高いと診断されても、実際に発病するまで何も治療を受けられない患者さんは、ずっと不安を抱えながら生活することになります。ひょっとしたらがんを回避できる可能性もあるわけですから、「それなら悪い情報は聞きたくなかった」という人もたくさんいるでしょう。ゲノムやAIによる診断結果を、良い情報も悪い情報もすべて聞いて受け入れるのか。患者側は考えておく必要があります。

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