研究は進むが…AIを使った診断と治療にはまだ課題が残る
AIを使う医療者側の“準備”もまだ十分とはいえないでしょう。たとえば、AIが「この患者にはこの治療が最適である」と回答したとき、それが本当に受け入れられる判断なのかどうか疑問が残ります。先日、テレビ朝日系のドラマ「ドクターX」でもこんな場面がありました。AIがサポートに入った肝臓移植の手術中に血管が損傷して大量出血したことで、AIは「インオペ(手術中止)」を指示します。担当医はそれに従おうとしますが、そこに主人公の大門未知子が入ってきて、見事に手術を成功させる……というお話です。
こうした患者さんの命がかかっているような極限状態では、どんなに優秀だとしてもAIによる判断は受け入れられないでしょう。
■「最適な回答」をすべて受け入れられるのか
医師と患者はやはり「人対人」ですから、「AIが治療不可能と判断したから……」となっても、医師も患者も納得できないのは間違いありません。もちろん、われわれは診断や治療で早くAIが使えるようになってほしいと考えています。しかし、それには研究者、技術者、医療者による本格的な話し合いがまだ終わっていないのが現状なのです。