著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

「減塩で長生きできる」のは本当か? 世界的医学誌で検証

公開日: 更新日:

 血圧が気になる人は塩分の摂取を控えめにしている方も多いでしょう。実際、塩分の摂取が多い人では血圧の高い人が多く、高血圧症の合併症である心臓病脳卒中のリスクも高まります。

 一方で、減塩によって、どれだけ心臓病や脳卒中が予防できるのかについては十分な検証がなされていませんでした。そんな中、減塩がもたらし得る健康への有益な影響を検証した研究論文が世界的にも有名な医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の電子版に2021年8月29日付で掲載されました。

 この研究では、中国の農村部(600村)に居住している2万995人(平均65.4歳、女性49.5%、88.4%が高血圧の診断、72.6%が脳卒中を過去に経験)が対象となっています。

 被験者は通常の塩の代わりに代用塩(塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)を使用する群と、通常の塩(塩化ナトリウム100%)を使用する群に村単位でランダムに振り分けられ、2つの群で脳卒中の発症率が比較されました。

 平均で4.74年にわたる追跡調査の結果、脳卒中の1000人当たりの年間発症率は、通常の塩を使用していた群で33.65件だったのに対し、代用塩を使用していた群では29.14件と、カリウム代用塩で14%、統計学的にも有意に低下しました。さらに代用塩は、心臓病の発症率を13%、死亡率を12%低下させました。一方で、代用塩に含まれるカリウムの摂取に起因する副作用の増加は認められませんでした。

 減塩は血圧を降下させるだけでなく、脳卒中や心臓病のリスクを低下させ、さらには長生きできる可能性も示されています。この研究結果によって、今後ますます減塩の重要性が強調されることになるかもしれません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした