アルツハイマー病を発症しても… 人生はまだまだ終わりじゃない
医学はめざましく進歩しています。ところが、脳については「まだわからないことが多い」と医学者ならみんなわかっています。神経細胞一個一個の働きや脳内の地図は明らかになり、基礎的な機能は解明されているものの、脳全体で見れば解明されているのはほんの一部にしか過ぎません。
ましてや個人の脳の領域となると、ほぼ解明されていない。一人一人の性格や個性がどのようにつくられ、社会的な反応にどう違いが生じ、発達や環境要因、生活歴、ストレスがそこにどんな影響を与えているのか。
アルツハイマー病は、脳の神経細胞の内外にアミロイドβというタンパク質がたまって神経細胞が死滅し、記憶をつかさどる海馬の辺りを含め広く萎縮していく病気です。
しかしそれは、脳全体で見ると一部の変化です。特にアルツハイマー病の早期では、まだまだ健康な部分が脳のほとんどです。健康な部分の能力を伸ばせば、衰えた部分をカバーできる可能性が高いのです。
そして、アルツハイマー病と診断された後も長い経過があるのです。だから「アルツハイマー病になっちゃって」と悲観的な気持ちになるのではなく、人生をもう一度考える機会として、患者さんやご家族には捉えていただきたいのです。診断を受けた後の人生をいかに生きるか。それを考えることは、「守り」ではなく「攻め」の一歩です。アルツハイマー病というとドラマや映画では、「突然発症して、間もなく家族の顔もわからなくなって、車椅子で施設入所」のような描かれ方をされがちです。それこそ、とんでもない。脳の異常を早く知り、対応策を講じることで、たとえアルツハイマー病と診断された後でも、脳の健康寿命を維持でき、人生を情熱的に送れるのです。
敵を見極めること!
それが闘いの始まりです。