切除不能の「ステージ3肺がん」は最新の免疫放射線療法で根治へ

公開日: 更新日:

アブスコパル効果で遠隔巣も攻撃

 鳴り物入りで登場した免疫チェックポイント阻害剤だが、それぞれの薬を単独で使用した場合の奏効率(効果が認められる割合)は、20%ほど。化学放射線療法との組み合わせで、これほど大きな効果が得られるのはなぜか。

「放射線と免疫チェックポイント阻害剤を併用すると、アブスコパル効果が増強されると考えられるのです」

 アブスコパル効果は何なのか。その仕組みは複雑なので、ざっくりと2つのルートで紹介する。

 1つは、放射線だ。

「放射線をがん細胞に照射すると、がん細胞が死滅するときに内部からタンパク質など細胞の情報がこぼれ出てきて、それを司令塔役の免疫細胞が検知して、攻撃役の免疫細胞に情報として伝えます。それによって、免疫細胞の攻撃系統が整い、原発のがん細胞を攻撃すると同時に、遠隔巣など離れた病巣にも攻撃を加えることがあるのです」

 実は、これがアブスコパル効果で、古くから放射線の効果として知られていたが、かなりレアケースだった。それが免疫チェックポイント阻害剤の登場で頻繁にみられるようになったという。

「がん細胞には、免疫細胞にブレーキをかける仕組みがあって、免疫細胞の攻撃を免れることができます。ところが、免疫チェックポイント阻害剤は、そのブレーキを外すことができるため、放射線との併用で、アブスコパル効果による免疫増強効果が報告されているのです」

 進行した腎臓がんやメラノーマなども、放射線と免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた免疫放射線療法が有望だという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 2

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    安倍元首相銃撃裁判 審理前から山上徹也被告の判決日が決まっている理由

  5. 5

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  1. 6

    マツコ・デラックスがSMAP木村拓哉と顔を合わせた千葉県立犢橋高校とは? かつて牧場だった場所に…

  2. 7

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」