切除不能の「ステージ3肺がん」は最新の免疫放射線療法で根治へ
アブスコパル効果で遠隔巣も攻撃
鳴り物入りで登場した免疫チェックポイント阻害剤だが、それぞれの薬を単独で使用した場合の奏効率(効果が認められる割合)は、20%ほど。化学放射線療法との組み合わせで、これほど大きな効果が得られるのはなぜか。
「放射線と免疫チェックポイント阻害剤を併用すると、アブスコパル効果が増強されると考えられるのです」
アブスコパル効果は何なのか。その仕組みは複雑なので、ざっくりと2つのルートで紹介する。
1つは、放射線だ。
「放射線をがん細胞に照射すると、がん細胞が死滅するときに内部からタンパク質など細胞の情報がこぼれ出てきて、それを司令塔役の免疫細胞が検知して、攻撃役の免疫細胞に情報として伝えます。それによって、免疫細胞の攻撃系統が整い、原発のがん細胞を攻撃すると同時に、遠隔巣など離れた病巣にも攻撃を加えることがあるのです」
実は、これがアブスコパル効果で、古くから放射線の効果として知られていたが、かなりレアケースだった。それが免疫チェックポイント阻害剤の登場で頻繁にみられるようになったという。
「がん細胞には、免疫細胞にブレーキをかける仕組みがあって、免疫細胞の攻撃を免れることができます。ところが、免疫チェックポイント阻害剤は、そのブレーキを外すことができるため、放射線との併用で、アブスコパル効果による免疫増強効果が報告されているのです」
進行した腎臓がんやメラノーマなども、放射線と免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた免疫放射線療法が有望だという。