新型コロナウイルス騒動は沈静化に向っているが…動物ウイルス学者はなぜ「絶望」したのか

公開日: 更新日:

■ウイルス学が生かされなかった

 日本で無意味な感染対策がまかり通った原因は多くの人たちがウイルスと細菌の区別がつかず、専門家がその間違いをたださなかったからだ、と宮沢氏は言う。

「栄養さえあれば増殖する細菌とは異なり、ウイルスが増殖するには生きた細胞が必要です。お札からうつる可能性があると言った大臣もいましたが、お札の上ではウイルスは増えません。お札についたウイルスが手についてうつるわけでもありません。大量にウイルスが指について、その指を鼻の穴に突っ込んだとしても、よほどのことがない限りうつりません。つまり、通常の生活では接触感染についてはあまり考える必要はないのです。飛沫感染についても、顔に大量の飛沫をかけられても鼻から飛沫を吸い込まない限りうつらないでしょう」

 確かに、流行当初は感染経路についてさまざまな報告がなされていた。しかし、2021年ごろには専門家の間で主な感染経路はエアロゾル感染であることのコンセンサスができていたという。

「動物コロナウイルスの知見からすると、1個の細胞にウイルス粒子100個以上が侵入しないと感染しません。ウイルスが人に感染するためには、少なくとも1000~1万個のウイルス粒子が必要です。1ミリリットルあたり1000万個の大量のウイルス粒子があったとしても、感染するためには、計算上は1000万個以上の微小飛沫粒子(1粒子あたり5マイクロメートルとして)が必要ということになります。自分が吸い込む微小飛沫粒子を10分の1に減らすだけでも、感染リスクは大幅に減るはずです。それには換気あるいはウイルスを捕捉する空気清浄機を設置することが大切です。飲食店などに設置されたアクリル板やスーパーのレジのビニールカーテンは換気の妨げになるばかりか、声が聞きづらいために大声になることでエアロゾルが出やすい環境に拍車をかけた。その点は、意味がないどころかマイナスだったと思います」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

  2. 2

    永野芽郁の「文春」不倫報道に噛みついたGACKTさんは、週刊誌の何たるかがわかっていない

  3. 3

    前田健太「ドジャース入り」で大谷との共闘に現実味 日本復帰より「節目の10年」優先か

  4. 4

    元NHK岩田明子は何をやってもウケない…コメントは緩く、ギャグはスベる、クイズは誤答

  5. 5

    ウクライナ出身力士 安青錦がすべてを語った…単身来日して3年、新入幕で敢闘賞

  1. 6

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”

  2. 7

    奥さんが決断してくれた…元大関の小錦八十吉さん腎臓移植を振り返る

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    のんを襲った"後輩女優の二股不倫報道"の悲劇…カルピスCMめぐる永野芽郁との因縁

  5. 10

    Mrs.GREEN APPLEとディズニーのコラボに両ファン懸念…売れすぎた国民的バンドゆえの"食傷感"