コロナ禍の3年間で感染症の基本知識と予防法が身につかなかったのはなぜか
「新型コロナがどのように感染するかはもちろん、飛沫が2メートル先に落下することも知らない。知っているのは政府に言われたときにワクチンを打ち、マスクをすればいい、ということだけ。しかも、この2つの効果についてはさまざまな考え方があり、専門家の間でも意見が分かれる。そのため子供たちはワクチンとマスクの効果があやふやだと思っている。この3年間、新型コロナの渦中にいて感染症について学んだのはそのことだけで、本当のことは何も学んでいない。とても驚きました」
こう言うのは公衆衛生に詳しい岩室紳也医師だ。最近、講演会先で接した中学3年生や学校関係者と話していてそう実感したという。
新型コロナウイルスは数万個体内に入らないと感染しない、など感染症の基本さえ知らない人が多すぎると岩室医師は言う。
「今のままでは新たな感染症が出現したときには、同じ騒ぎの繰り返しになるでしょう。むろん、当初、新型コロナは新しい感染症でわからないこともあった。そのため政府も自信をもって話せることが少なかったのかも知れません。しかし、混乱を恐れてか、たとえばエアロゾル感染が明らかになっても従来の情報を修正することを怠った。政府がやってきたことは専門家会議の議論の内容を整理することなく新聞やテレビに報じさせてきただけ。国民の幅広い層に小中学生でもわかる言葉で正しい情報を流す努力がなされていなかった。その結果、多くの国民は『よくわからないが、ワクチンとマスクをしていればいいのだろう』と単純化して理解した気になってしまった」