マルチタスクはシングルタスクよりも作業効率を低下させる?
スタンフォード大学のワグナーらは、マルチタスクが認知コントロールにどのような影響を与えるかといった調査を行っています(2009年)。実験ではマルチタスクに慣れた大学生を対象に、注意力や作業記憶に関する課題を行わせ、シングルタスクのケースとマルチタスクのケース、双方を比較しました。被験者の脳のMRI画像を撮影して、認知コントロールに関する脳の活動を調べてみたそうです。
その結果、マルチタスクに慣れた被験者は、シングルタスクに比べて、作業中に認知コントロールを行うための脳の活動が低下。また、マルチタスクの方が、作業中に不必要な情報に注意を払う傾向があることも明らかになったといいます。
その一方で、香港中文大学らのルイらは、「マルチタスクが認知能力を改善することはあるか」について調査(2012年)をしているのですが、マルチタスク能力と多感覚統合能力は、正の相関関係があると、リポートしています。
多感覚統合能力とは、複数の感覚情報を統合して処理する能力。例えば、視覚的な情報と聴覚的な情報を同時に処理して、より豊かな情報を認識できる能力などが挙げられます。ルイらによれば「マルチタスクに慣れた人は、多感覚統合においても高い能力を示す傾向がある」と指摘しています。