【アスペルギルス症】免疫力が低下した人では侵襲性の死亡率が50%を超える
九州北部~東海の各地で梅雨入りが発表され、関東甲信も間もなくでしょう。今回はジメジメした季節に発生しやすいカビ(真菌)による感染症についてお話しします。
ヒトに感染症を引き起こす真菌としては、アスペルギルスやカンジダなどが知られています。アスペルギルスは広く自然界に存在していて、特に暖かく湿った環境でよく成長し、土壌、植物、堆積物、家屋内などに見られます。アスペルギルスの仲間には、われわれ日本人になじみの深いコウジカビも含まれています。コウジカビはコウジとして味噌や醤油、日本酒を造るために用いられてきたことからこの名が付いています。
アスペルギルスによる感染症は「アスペルギルス症」と呼ばれ、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症や侵襲性アスペルギルス症などが有名です。前者では、せきや喘鳴(ぜいめい)などアスペルギルスによるアレルギー性の呼吸器症状が見られます。
一方、後者はアスペルギルスが肺などの組織を侵し、破壊することで起こります。発熱、胸痛、せき、息切れなどが見られます。ヒトにカビが生えてしまう状況ですので、多くの場合、免疫力が低下している方に起こります。健康な人に対しては感染を起こさず、日和見感染のひとつと考えられています。免疫力が低下するケースとしては、骨髄移植や臓器移植を受けた人、ステロイド剤を多量に使用している人、白血病や悪性腫瘍に対する化学療法を受けている人、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人、血液中の好中球が少ない人などが挙げられます。