診察室に入ってきた時の表情、姿勢、動作、歩き方、会話に着目
最初の診断は「絶対」ではない。別の可能性が考えられることも
2006~08年に行われた疫学調査では、認知症のうち最も多いのがアルツハイマー型で67.4%。2番目が血管性認知症で18.9%、3番目がレビー小体型で4.6%、そして前頭側頭葉変性症が1.1%でした。
アルツハイマー型、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症は4大認知症とも呼ばれ、いずれも改善は困難なわけですが、治療の目標はそれぞれ異なります。
それゆえに、認知症とひとくくりにせず、鑑別診断が重要です。
アルツハイマー型とレビー小体型は薬物治療で進行を遅らせることが目標となりますし、血管性認知症は進行させないことが目標。
前頭側頭葉変性症は、現時点では確立された治療法はなく、非薬物療法や環境調整などで、患者さん、およびご家族の生活の質を向上させることが目標となります。
さて、認知症の疫学調査の結果を紹介しましたが、この結果ではレビー小体型が非常に少ない。医師の中には「レビー小体型はもっと多いはず。アルツハイマー型と誤診されている患者さんがかなりいるのでは」と指摘する声もあれば、そうではないと指摘する声もあります。
実際のところ、レビー小体型にアルツハイマー型の症状が合併することは多く、初期では鑑別が難しいケースもあります。レビー小体型以外の認知症でも同様です。患者さん側としては、最初に診断された病名を100%正しいと思い込むのではなく、別の可能性もあるのではないか、という目を持つことも必要だと思います。
アルツハイマー型とレビー小体型の典型的な違いを紹介します。
【アルツハイマー型】
・記憶障害が主に現れる
・幻視は少ない
・物盗られ妄想がよくある
・認知機能は緩やかに低下
・穏やかで、症状が大きく変動することは少ない
【レビー小体型】
・人や虫がいるなどの幻視や見間違いが多い
・幻聴も少なくない
・幻視で嫉妬妄想などが引き起こされる
・認知機能は良い時と悪い時とがある
・寝ている時に大声を出すなどの異常行動がある
・表情が乏しく、気分も沈むことが多い