著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「検定」の危うさと「推定」のあいまいさ…医者も理解しているとは限らない

公開日: 更新日:

「検定」と「推定」の続きである。統計学的な考え方は、身近であるようで、数学的に正確に理解しようとすると途端に難しくなる。実際、多くの医者も統計学を苦手にしている。統計学は多くの医学部で必修科目である。

 しかし学生時代は統計学が卒業後に臨床医として働く中で必須の学問であるという認識は薄く、試験が終われば忘れられてしまう。それが、私自身の学生時代の多くの学生の現実でもあった。

 そうした統計学の医学教育の中での位置づけが、卒業後の医者にどう影響しているのか。驚かれるかもしれないが、臨床医の大部分は日常的に医学論文を読む習慣がない。特に60歳を過ぎるような私の世代で、開業医であればなおさら、その傾向は強くなるだろう。背景には、多くの医師が学生時代の統計学の勉強を忘れ去り、その後、学び直す機会もなくその知識を欠いたまま忙しい日々が過ぎてしまい、医学論文を読めない、読まないという現実がある。

 さらに言えば、医学論文を日常的に読んでいる医者であっても、その読みが統計学の誤用であることが多い。

 ありがちなのは、統計学的な検定結果をそのまま臨床的な有効性であるとの読み方をしてしまうことである。論文全体を読むことなく、「統計学的に有意な効果があった」「統計学的に有意な効果はなかった」との結論部分だけをうのみにしてしまうのである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明