心臓手術でも脳を冷やして温度を下げてから実施するケースがある
「脳の温度」を意識することは健康維持に大いに役立つ可能性があると前回お話ししました。通常、われわれが日常生活の中で経験する脳の温度は、35~39度台くらいでしょう。その範囲内で、温度が高くなったら冷やし、低くなったら温めて“適温”を維持することを心がければ、体内循環が適切にコントロールされ、結果的に心臓を守ることにつながります。
また、夏にそれを実践すれば熱中症、冬であればヒートショックを防げる可能性が高くなります。女性であれば、腸の蠕動運動が良好になって慢性的な便秘の解消につながることも考えられます。脳の温度は、脳にある自律神経中枢の働きに関係するため、全身の健康管理につながるのです。
日常生活とは状況が大きく違いますが、心臓手術でも脳の温度を意識するケースは少なくありません。そのひとつが「超低体温循環停止法」です。血液を体外循環させる人工心肺装置を使って冷却した血液を体内に送り込み、患者さんの体温を20度前後まで低下させます。さらに、頭をアイスパックなどで冷やして脳の温度を18~20度くらいに下げ、人工心肺による血液の循環を一時的に停止した状態で手術を行います。