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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

効果を示すさまざまな指標…「正しい指標」があるわけではない

公開日: 更新日:

 これまでマスクの効果を検討した論文をいくつか紹介してきたが、その効果は主に「相対危険」という指標で報告されている。しかし、相対危険は数ある指標のうちのひとつに過ぎない。相対危険は、治療群と対照群の発症率の比をとることによって計算される指標だが、それに対して差をとる指標、「絶対危険減少」や「治療必要数」も論文でしばしば使われる。デンマークの研究を紹介した際に、この相対危険と絶対危険減少について簡単に説明したが、今回は治療必要数という指標も含め、指標そのものについて再度検討したい。

 今回はバングラデシュの研究の結果を利用して、それぞれの指標を比較してみよう。

 まず相対危険は論文そのもので報告されており、症状のあるコロナ感染性の発症率に対して0.884である。これはマスク推奨群と非推奨群のそれぞれの発症率を、対照群を分母として比をとった指標である。1の時に両群で発症率が同数、1より小さければマスク群で発症が減少、1より大きければマスク群で増加する。0.884は1より小さいため、マスク推奨群でコロナ発症が少ないという結果である。1000の発症が884まで少なくなるのだ。さらに、この相対危険を1から引いたものを相対危険減少と呼ぶ。「1-0.884=11.6%」が相対危険減少である。

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