「損したくない」と思うほど損をする…焦りが判断を誤らせる
また、早稲田大学の正木は次のような実験(2005年)を行っています。参加者は元金2000円を受け取り、ギャンブルを模したゲームを行います。特製の装置を使い、参加者は10円か50円か2つの選択肢から1つを選びます。そして、装置で「アタリ」が出ると選んだ金額がもらえ、「ハズレ」が出ると、その分のお金を損するというものです。
その結果、50円を損したときには、次も50円を選ぶ確率が高いとわかりました。大きな損をすると、それを取り返そうとあえてリスクを取りにいってしまうことが示唆されたのです。実際のギャンブルでも、大きなお金をかけて損をするほど、その損を取り返そうと焦りが生じ、大きな額を投じてしまうといったケースは少なくありません。
すでに使った費用やコストに対して「もったいない」といった心理が働き、合理的な判断ができなくなってしまう「サンクコスト(効果)」という現象があります。
サンク(sunk)とは「沈む・沈没」を意味する単語の過去形です。埋没してしまったコストに、人は焦りや憤りを覚え、正常な判断がつきにくくなるのです。