著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

点滴が血管の外に漏れ出すと重篤な合併症を起こす危険がある

公開日: 更新日:

 輸液製剤にクスリを混ぜて投与することは意外と多いです。そして、そうしたクスリの中には漏れた場合に細胞を障害する性質があるものもあります。クスリによっては漏れた周囲の組織に腫れや痛み、疼痛(とうつう)を生じるだけでなく、炎症を起こしたり(炎症性)、最悪、壊死を起こして(壊死性)外科的な処置が必要になるものもあるのです。

 特に注意が必要なものとして、抗がん剤が挙げられます。抗がん剤はその薬効特性上、細胞を障害する性質のものが多いです。特に壊死性抗がん剤が血管外に漏れた場合には、速やかに対処しなければ重篤な経過をたどってしまうこともあります。

 対処としては、壊死性や炎症性でなければ経過観察が基本で、必要に応じてステロイドの外用薬を塗布する場合もあります。炎症性であれば漏出部位の冷却、ステロイドの外用を塗布することが多いです。壊死性であれば漏出部位の冷却(クスリによっては保温)、漏出部位の周りを囲むようにステロイドを局所皮下投与、そしてステロイドの外用を塗布します。

 こうした血管外漏出のリスクが高いのは、血管が硬く、細い人が一番に挙げられます。これは高齢者の多くが該当します。他にも体動が多い人などさまざまなリスク因子があります。また、一度血管外漏出したことがある人は、他の部位からクスリを投与したとしても以前に漏れた部位が腫れるなんてケースもあります。

 抗がん剤以外のものでも重篤な合併症を起こすことがもちろんありますので、投与中に異変を感じた場合はすぐに申し出てください。

【連載】高齢者の正しいクスリとの付き合い方

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…