「お化粧」は認知機能にどんな影響を与える? 岡山大研究チームが発表
外来通院は何のため?
最近はオンライン診療という選択肢が増え、通院時間がなかなか取れない方にとっても便利な時代となりました。しかし私は、特に高齢者の方においては、外来通院はとても大きな意味を持っていると考えています。
外来通院の目的は、まずは、治療のための薬を処方してもらうため。次に、病気の診断や検査を受けるため。もちろんこれらの目的は間違っていませんが、実際に病院へ足を運ぶことで得られるものは、もっと大きいのです。
外来を受診するためには、それなりの準備が必要です。着ていく服を選び、かばんに保険証や財布などを入れ、時間に間に合うように身支度を整える。女性ではお化粧をし、髪の毛をきれいに整える方もいるでしょう。天気予報をチェックし、必要に応じて傘の準備もしなくてはなりません。
クリニックや病院までの道のりは、社会との触れ合いの連続です。また、診察室では改めて自分の病気の理解が深まり、そのたびにまたこれから頑張ろうという気持ちにもなることと思います。
いつもは別に住んでいる息子さんや娘さんが外来に付き添ってくれたりと、普段より家族の距離が縮まることもよく見受けられます。一人でも家族同伴でも、外来での会計を終えて、帰りにはどこかでおいしいものを食べて帰るという方も少なくないようです。
そうなんです。外来通院は「病気のため」ではなく、「残念ながら病気持ちではあるものの、日々の生活を充実させ、輝かせるため」と考えることができるのです。
お化粧が認知症患者さんにもたらす影響を示した岡山大学の研究を紹介しましたが、お化粧一つとっても、プラス効果がいくつもあります。コロナ禍で外出や旅行はおろか、近所の散歩すら控えた方もいることと思います。そのまま、なんとなく外出回数が減っていませんか?
一般的に、仕事を継続している方は、収入を得るためだけではなく、やりがいと責任を持って日々を送っているために、より健康的になるといわれます。外来通院にも同じような効果があるのではないかと思っています。
定期的に外出し、社会に触れ、外食や美術館・映画館通いも兼ねるなど、いわゆる「生活の質」がむしろ高まることにつながります。まさに「一病息災」につながりますので、外来通院を外出するちょうど良い機会と捉え、ぜひ意義深いものにしてもらえたらと思います。