認知症の発症や進行予防に「料理」が有効なのはどうして?
「料理」が認知症の発症や進行予防に有効なのはご存じでしょうか。メニューや段取りを決めるには認知機能のひとつである「計画力」を使い、同時に複数の作業を行うと「注意分散機能」を働かせます。大阪ガスと東北大学が行った研究では、献立を考えたり野菜を切る、ガスコンロで炒める場面では、安静時と比較して脳の前頭前野が活性化されることが分かっています。
料理は完成品が目に見えるため達成感が得られやすく、食べることで「食欲」といった基本的欲求が満たされます。本人は役割を持つと意欲が高まり自信を取り戻し、生活の質(QOL)の向上につながります。そうしたことから、認知症ケアと予防を目的とした料理活動を「料理療法」と定義し、現在、認知症に対する非薬物療法のひとつとして全国の高齢者施設などで広める活動を行っています。
ある老人ホームでは、軽度認知障害(MCI)の方を対象にお菓子作りを行う「お菓子倶楽部」を半年間、2週間に1回の頻度で実施していました。リーダーもMCIの方が務め、レシピの改良から道具の準備まで、すべて参加者が主体となって行います。そこに参加した80代後半の女性は、参加当初はご自身の病状を話すばかりで表情もこわばっていました。回数を重ねるごとに表情が明るくなり、自ら率先して他の参加者に声をかけるように。6カ月後に再び評価を行うと、MCIから正常値に回復しただけでなく、QOLの観察評価(MOSES)も32点から25点へと改善し、「○○を作りたい」「○○に行きたい」など、生活の意欲が向上して、ご主人も喜ばれていました。