ヒトの羊膜で足の傷を治す「エピフィックス」とはなにか?
足に傷ができると、通常であれば4週間以内で自然と治癒していきます。ところが糖尿病や下肢循環不全などの基礎疾患があると、血行障害や神経障害、免疫機能の低下で傷が治らなくなる「難治性潰瘍」の状態になりやすい。従来の治療では改善が見られない難治性下肢潰瘍の新しい治療法として注目されているのが「エピフィックス(EpiFix)」です。
これは、ヒトの胎盤の羊膜・絨毛(じゅうもう)膜を加工、乾燥させて作られたシート状の創傷被覆材で、帝王切開を受けた妊婦さんから提供された胎盤を原料としています。“ヒトの羊膜で治療”と聞くと少し驚かれるかもしれませんが、タンパク質や成長因子を多く含む羊膜は、創傷治療に重要な炎症抑制作用や血管形成促進、瘢痕(はんこん)組織(傷が治癒する過程でできる組織)形成を低減させる作用があるため、昔からさまざまな治療に用いられてきました。現在、保険適用になっているのは「糖尿病性足潰瘍」あるいは「静脈うっ滞性潰瘍」の2つで、これまで治癒が難しかった症例に対しても高い有効性を示すことが分かっています。
ある60代の男性は、右足首の内側に何度もうっ滞性潰瘍を繰り返して皮膚がもろくなり、そこに深い傷ができていました。