今年は価格高騰時代の超コスパCOTY? なぜ“最高にちょうどいい”フリードが選ばれたのか
今年も恒例の年グルマ、日本カー・オブ・ザ・イヤーことCOTYが決まった。大賞は見事、ホンダの新型フリードに!
ご存じトヨタ シエンタと並ぶ日本市場にピッタリなコンパクトミニバンで、今年の新型で3代目。そのCMコピー「最高にちょうどいいホンダ」から想像できるように、扱いやすい4.3m強の全長やSUV調クロスターを除くと完全5ナンバーに収まる1.7m以下の全幅など、本当に扱いやすい。
しかし逆を言うと、基本コンセプトは初代とほとんど同じで、目新しくないっちゃ目新しくない。よりシンプルに一新した内外装デザインやおしゃれソファのような座り心地重視のシート、一新されたホンダ流ハイブリッドe:HEVのできや燃費はいいけど、要は正常進化だ。
実は予選で選ばれていた「10ベストカー」には世界的タフギアSUVの新基軸トヨタ ランドクルーザー250や、かつてない小さな高級車レクサスLBX、インド生産ハイクオリティコスパSUVのスズキ フロンクス、新型ディーゼルエンジンを搭載した3列シートSUVのマツダCX-80など、新しいアイデアを盛り込んだクルマも多かった。
選ばれた理由は「価格」?
そんな中、なぜある種地味なフリードが選ばれたのか? 全59名いる選考委員の中で、特にフリードに最高点を入れた人のコメントを読むと、「乗って良し走って良し使って良しの日本の道にジャストなコンパクトミニバン」とか「使い勝手をそのままに、更にひと回りコンパクトなサイズにまとめた確かな存在感」などサイズを褒める人も多かったが、「スタート価格を250万円台に設定したことも注目に値する」とか「こんなクルマを300万円程度で提供できる国は他にない」と、価格に踏み込む意見も多かった。
実は今回の10ベストカーのスタート価格を見ると、共に250万円台のフリードとスズキ フロンクスを除き、ほとんど400万円以上。
ランクル250は520万円〜、LBXは420万円〜、三菱 トライトン498万円〜、マツダ CX-80 394万円〜、ミニ クーパー 396万円〜、ボルボEX30 559万円〜……しかもコイツはあくまでもスタートなので、ざっくりほとんどのクルマで実質500万円を超えてくる。
どれもカッコイイし、新技術もたっぷり投入されているが、正直フツーのサラリーマンにはおいそれと買えないレベルになっていると言っていいのだ。
筆者はスズキ フロンクスに最高点を投じたが…
ぶっちゃけ、今の価格高騰は「ちょっとイイと国産車でも500万円クラス」を現実化してしまった。
もちろん、昨今流行りの残価設定ローンで車両500万円のクルマでも5年後に下取ることを考えると月5万円くらいで乗れたりするが、それでも月5万だし、結局数100万円払って最後手元に残らないことに違いはない。
やはり平均所得がせいぜい470万円前後の国民が、500万円のクルマを買おうってところに無理があるのだ。
個人的には同じく250万円台スタートでしかもインド生産ハイクオリティカーのスズキ フロンクスに最高点を投じたので、その評価が全体4位だったのは解せないが、ぶっちゃけ実質500万~600万円のクルマがいくらデキが良くても、日本カー・オブ・ザ・イヤー!と言われても、ピンとこない人の気持ちは良くわかる。
今年は秘かに、“日本のビンボー化”を象徴する「超コスパCOTY」でもあったのではないかと思ったりもしているのだ。