「リオ五輪は金狙う」と意欲も…加速する佐々木監督解任論
■「ノリオってサイテー」
そもそもカナダW杯前から、08年から続く佐々木監督長期政権の弊害が顕在化しつつあった。
昨年のなでしこリーグ期間中、佐々木監督がリーグ視察に来なかったことが数回あり、協会関係者や選手がいぶかりながら調べてみると「講演会のスケジュールが優先されていた」(サッカージャーナリスト)。選手からはブーイングの嵐だったという。
今年3月、ポルトガルでアルガルベ大会が行われ、大黒柱のMF澤(36)がメンバーから外れた。
佐々木監督は「澤とは電話でコミュニケーションをとっているし、今回の代表選考のことも伝えてある」という趣旨のことをマスコミ関係者に話した。報道された佐々木監督のコメントを伝え聞いた澤が「メールが数回届いただけ」と不快感をあらわにして、それが代表選手の耳に入って「ノリオってサイテー」と総スカンだったともっぱらだ。
「なでしこジャパンはドイツW杯以降、澤に代わって主将を務めるようになった宮間が仕切り、宮間からダメ出しされると功労者である佐々木監督も、その座は安泰とは言えない。宮間は佐々木監督が12年ロンドン五輪以降、新戦力発掘のためとはいえ、実力不足の若手を多く招集したことに不満を抱き、今では代表選手たちも佐々木監督ではなく、宮間の言い分を聞くようになった。確かに代表合宿中などのミーティングでも、佐々木監督が話すのは冒頭の20分がせいぜい。あとは宮間が中心になって選手同士が話し込んでいる。ある日のミーティングでの出来事。佐々木監督が10分ほど話したら、一部の主力選手が『ノリオ! もういいから。あとはコッチで進めるから!』と大声を出した。想定外の事態に初めて代表合宿に参加した若手選手は、腰が抜けるほどビックリしていた」(前出の関係者)
■後任に浮上する女性指揮官の名前
12年8月、ロンドン五輪が銀メダルという結果に終わり、翌9月に契約が満了することになっていた佐々木監督は、退任するつもりでいたという。結局、契約を更新してカナダW杯でも指揮を執ったが、13年中にサッカー協会は「次期なでしこ監督は女性」を基本方針に据え、元日本代表MFの高倉麻子・U―18(18歳以下)代表監督(47)に白羽の矢を立てたといわれている。
「13年に高倉監督は、14年開催のU―17(17歳以下)女子W杯の出場を目指すU―16(16歳以下)日本代表監督に就任。まず経験を積ませるのが目的でしたが、手腕をメキメキ発揮してU―17W杯を制してしまった。この時点で、ポスト佐々木監督は高倉監督で確定でした。佐々木監督は16年8月のリオ五輪を最後に勇退。そして高倉なでしこ監督が誕生する――。これがサッカー協会の青写真だったのです」(前出のジャーナリスト)
しかし、佐々木監督の求心力が低下している現在、可及的速やかに人心を一新してリオ五輪に臨むべきでは、という意見が噴出しているという。
なでしこジャパンは8月1日に中国で開幕する「東アジア杯」(中国、韓国、北朝鮮が参加)に出場する。佐々木監督は去就について明言を避けつつも「東アジア杯に向けてしっかり準備をしてから、その次がある」と意欲ものぞかせたが、ここで不細工な試合をしたら、一気の監督交代もあり得ない話ではない。