金メダル以外は敗北…打倒ソ連のために敵将も丸裸にした
ともあれ、「打倒・ソ連!」を掲げた山田は、徹底して監督ギビ・アフヴレジアーニを研究する。メキシコでのギビは練習を一切公開せず、故意に主力選手の負傷説を流し、日本を油断させていたからだ。山田は言った。
「当時のソ連チームは国家に支えられて資金も豊富。それに勝つには相手を丸裸にすること。ギビが試合でどういう作戦をとり、どう選手を動かすかを徹底して調べた。サーブの方向、サーブレシーブ後のパスの方向、スパイクのコース、フェイントの落下点などをね。観客席に選手たちを座らせ、試合中のソ連のボールの動きをすべてノートに線で描かせたわけだ」
それだけではない。日本にソ連チームが遠征してきた際は、放映するテレビ局に頼み、ソ連のベンチ近くに集音マイクを設置。監督ギビが選手にどんなアドバイスを出しているかを録音した。
「ギビはすげえことを言ってたな。『この試合に負けたらメシ抜きだ。収容所送りだ!』なんてね。まあ、一種のスパイ活動なんだが、強国であれば誰もがやっていた。私の記事が雑誌に出ると、1週間後には翻訳され、各国の監督は読んでいたね」