金メダル以外は敗北…打倒ソ連のために敵将も丸裸にした
そして、76年モントリオールオリンピックを迎えた。すでに2年前の世界選手権大会でソ連を倒して優勝。44歳の山田率いる日本チームは“新東洋の魔女”と称された。だが、現地入りすると12人の選手の中で一番元気な、エースの白井貴子でさえも緊張した。縁起を担ぎ、真夏なのに日本リーグで全勝優勝した際のセーターを着ていた。
その点、指揮官の山田は、あくまでも冷静だった。私にこう言った。
「小島さんが監督だった4年前のミュンヘンのときは、アラブゲリラの選手村襲撃で、日程が(1日)延びた。結果、ソ連との決勝戦を前に主力選手2人が生理になった。それが敗因の一つ。つまり、何事が起きても動じない強い心で、試合に臨むこと」 (つづく)
▽やまだ・しげお 1931年、静岡県生まれ。東京教育大(現筑波大)卒業後に高校教員を経て女子バレーボールの日立監督に就任し、日本リーグ優勝18回。五輪監督は68年メキシコ大会銀、76年モントリオール大会金、84年ロサンゼルス大会銅。2006年にバレーボール殿堂入り。