番狂わせにドラマあり 多賀竜「連覇なんて狙ってないよ」の一笑が今は昔の平幕優勝
九州場所は阿炎が千秋楽に逆転で優勝をさらった。3場所連続平幕優勝は史上初。年6場所制になった1958年以降、横綱・大関の優勝が1場所(夏場所の照ノ富士)しかなかった年も初めてだ。
平幕優勝はこれまで10年間に3~5場所程度。80年代は1場所だけで、蔵前国技館の最後となった84年秋場所だった。
中日を終えて西前頭12枚目の多賀竜だけが勝ちっ放し。平幕が単独トップで折り返すのは71場所ぶりのことで、後半は入幕2場所目の小錦が千代の富士、隆の里の両横綱らを倒すなどしてさらに荒れた。
千秋楽、小錦が大関琴風(現尾車親方)と大相撲の末に敗れて3敗となり、多賀竜が13勝2敗で初賜杯を抱く。「ひと山いくらで入った相撲取りなのに……。一日だけ横綱になったみたいだよ」と細い目をうるませた。
激動の昭和に土俵を守ってきた国技の館らしい、波乱のフィナーレだった。
翌場所、多賀竜は小結に昇進し、初日に隆の里を破った時は余韻を感じさせたが、2日目から6連敗。この場所を6勝9敗で終えている。