マニア垂涎の堂々167分映画ウンチク大全集

公開日: 更新日:

「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」

 マニアックな映画ファンというのは、自分の発見を誰かに語りたくてたまらないというハタ迷惑な人種である。

 近ごろやけに多い映画のユーチューバーはこの手だろうが、同じ映画談議でもプロがやるとやっぱり違うねえ、と思わせるのが今週末封切りの「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」。スコットランドのドキュメンタリー監督マーク・カズンズによる堂々167分の映画ウンチク大全集だ。

 もともと英BBCテレビなどで世界中の映画人にインタビューしてきたことから業界に顔が広く、2011年には今回と同じ題名の「オデッセイ」(大航海)編を製作。これが全15回のテレビ番組で古今の映画から種々のエピソードと映像表現を集めたマニア垂涎の中身になっていた。

 本作は原題のサブタイトル「ニュージェネレーション」からわかるように、主に21世紀に入ってからの新しい映画表現を世界中に求め、グローバル化した時代の新しい感性が世界中で斬新な映像を生み出すさまを魅力的に見せてくれる。インドからフィンランド、フランスから香港、ギリシャ、ケニア、アメリカと自在に飛び回るさまは映像の世界旅行の趣だ。

 ちなみに映画マニアというのはいくら食べても太らない大食い自慢みたいなもので、とにかく目の前にドーンと大量の映画を積み上げられると無条件に喜ぶおかしな手合いだ。そこで「キネマ旬報ベスト・テン95回全史 1924-2021」(キネマ旬報 3960円)。戦前から続く専門誌の年間ベスト10が95回にわたって積み上がる。5年前に出た「90回全史」にも共通することだが、近年のヒットはなんといってもSNSが大きな原動力になった例が多い。知られざる地味な作品もSNSの力で注目を浴びる。歴代のベストに「映画も世につれ」の実感が湧いてくる。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    下半身醜聞の西武・源田壮亮“ウラの顔”を球団OBが暴露 《普通に合コンもしていたし、遠征先では…》

  2. 2

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  3. 3

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  4. 4

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  5. 5

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  1. 6

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  2. 7

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

  3. 8

    いまだ雲隠れ中居正広を待つ違約金地獄…スポンサーとTV局からの請求「10億円以上は確実」の衝撃

  4. 9

    キムタクがガーシーの“アテンド美女”に手を付けなかったワケ…犬の散歩が日課で不倫とは無縁の日々

  5. 10

    悠仁さま「渋渋→東大」プランはなぜ消えた? 中学受験前に起きた小室圭さん問題の影響も