「電子立国は、なぜ凋落したか」西村吉雄氏
地デジ化はテレビとインターネットが親和した新しい産業誕生の契機になり得た。しかし、既存放送事業者はインターネットとの親和を嫌い、新ビジネスの導入は排除された。
「イノベーションを嫌っては、産業を発展させることは難しい。日本ではイノベーションを、より新しく高性能なものを創造する技術革新と捉えられていますが、大きな間違いです。イノベーションとは、“既存の物”の組み合わせを革新することで新たな価値を実現する行為。高品位ばかりを追求しがちな日本の電子産業には、大きく欠けている部分です」
本書では、パソコンや半導体などの各種の電子産業についても凋落の要因を探っていく。いずれもイノベーションを捉え違えていることや、かつての成功体験から抜け出せない体質などが浮き彫りにされている。電子産業の轍を踏まぬよう、本書から学びたい。
(日経BP社 1800円)
▽にしむら・よしお 1942年生まれ。工学博士。71年、日経マグロウヒル(現在の日経BP社)に入社。「日経エレクトロニクス」編集長、東京大学大学院工学系研究科教授などを経てフリーランスの技術ジャーナリストに。著書に「電子情報通信と産業」など。