「電子立国は、なぜ凋落したか」西村吉雄氏
日本にとって電子産業は、自動車産業と並ぶ外貨の稼ぎ頭だった。しかし、現在でも12兆円の貿易黒字を確保している自動車産業と比較し、電子産業の凋落は甚だしい。
「1990年ごろには10兆円近かった電子産業の貿易黒字は減少を続け、2013年には赤字に転落しました。売れすぎて貿易摩擦まで起こしていた日本の電子産業がなぜここまで駄目になったのか。それを追究するために執筆したのが本書です」
一般社会が日本の電子産業の凋落を実感したのは薄型テレビで活況を呈していたテレビ産業に元気がなくなった2012年ごろだろう。
「貿易収支が減少の一途をたどる中、実はテレビの内需と生産は2003年から急増を見せました。2003年といえば、3大都市圏の地上デジタル放送開始年で、“地デジ特需”が始まったわけです。しかし、それも2010年末と11年6月のピーク以降は壊滅的に急減。地デジ特需は、11年7月のアナログ停波と同時に終わることは分かり切っていたはずです。にもかかわらず、日本のテレビメーカーは活況を呈していた07年ごろから大型投資を進めた。経営陣は特需終了後の供給過多に対する見通しが甘く、かつての成功体験から抜け出せずに設備投資という誘惑に負けてしまったのでしょう」