愛川欽也さんはレアケースだが…“病気取材”メディアの課題
今の芸能界を見渡すと、「歌手でタレント」といったいくつかの肩書を持つ通称「マルチタレント」がいる。しかし、「歌手としてヒットもなく仕事も減ったことからタレントも」と実質、クラ替えしたような人も少なくない。
亡くなった愛川欽也さん(享年80)は役者、司会、DJなど、すべてを完璧にこなせるプロだった。まさに「マルチタレント」の見本のような人。その姿は昔かたぎの職人にも似ていた。人に知らせず自宅で家族に見守られながら息を引き取ったのも昔かたぎの愛川さんらしいとも思う。
当初、妻のうつみ宮土理は「風邪をひいただけ」と重病説を否定して「嘘」をついたのも愛川さんの生き方を最後まで守り通した夫婦の絆。誰も責めることはできない。
愛川さんと同年代で昭和を代表する俳優だった高倉健さんも菅原文太さんも亡くなるまで病気を隠し、密かに入院生活を送っていた。映画関係者は、「本業以外で騒がれるのを“よし”としない昭和の映画スターらしい」という。
2人とも役者の仕事だけで晩年は仕事をセーブしていたため、顔を見なくとも不思議はなかったが、仕事人間だった愛川さんは唐突なレギュラー番組の降板など不自然さが残り、報道陣を集めることになってしまった。「介護ベッドが運ばれた」などと報道も加速。重篤説が流れたレアケースだった。