「御座船安宅丸」演出 森健太郎が語る浅利慶太からの薫陶
創設者の浅利慶太氏(83)には、独立した後も影響を受けている。
「舞台人ではじめて企業理念を語った人。もっとも印象に残っているエピソードは、創設当初はお金がなくて、同じく俳優兼創設者の日下武史さんと、一杯のかけそばを分けあって食べて、何駅も歩いて一緒に帰ったりしたそうです。苦労をしていたからこそ、劇団四季は社会的な接点を大事にしていたし、サービス業として徹底していたんだと思います」
役者が代わっても、同じクオリティーを出すためのルールもあった。
「浅利さんからは『感情で芝居するな』と言われました。舞台の面白さは、台本や音楽の中に込められている。キャストがなんやかんやできることではないと。一字一句、言葉を音として伝えれば感動は伝わる。『一音落とすものは去れ』と教育されていました。人の耳に入りやすい音の中核となる母音で話す『母音法』も学びました。2~3時間もののセリフを全部、母音に直して話すんです。こうすると大きな声を出さなくても、人に届くようになる。他に公演のロングランシステムやチケットシステム(ぴあ導入)なども考案。文化の継承、ビジネスのノウハウなど学ぶことは多かったです」