ピン芸人・佐久間一行 絵本上梓のウラに旧友又吉の奔走
物語は、主人公の「ふでばこ君」が仲間と一致団結し、あらゆる困難に立ち向かうというシュールな設定だ。悪者が登場しないのは、「くるっと平和解決」という決めゼリフで締めくくる佐久間の芸風にも通じる。そして読む人の心を温かくするが、出版不況の折、実績のない新人が本を出版するのは簡単ではない。なかなか話が進まない中、動いたのが、同じ吉本所属のお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹。東京吉本総合芸能学院(東京NSC)の3年後輩で「ふでばこ君」の愛読者だった又吉が、自ら出版社に売り込んだという。
「昨夏のある晩に2人で落ち合って、ワンカットずつ意図の説明をしたら『原稿を預からせてくれ』と。又吉は膨大なイラストの束を自分のリュックに入れ、『もしかしたら肩がちぎれるかもしれない』とボヤキながら暗がりの道へ消えて行ったんですが、いまでもその後ろ姿は忘れられません。後日、台風で雨風が吹き荒れる中、出版社の編集さんを尋ねてプレゼンしてくれたそうです。又吉とは付き合いが長いんですが、苦楽を知る仲間のひとり。僕の状況を見て思うところがあったのかもしれません」
舞台裏には物語さながらの「深イイ話」があった。