著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

マンガ原作頼み邦画に一石 長澤まさみ最新作の挑戦的手法

公開日: 更新日:

 長澤まさみ主演の「嘘を愛する女」が公開されている。04年の「世界の中心で、愛をさけぶ」以来となる長澤と高橋一生の共演も話題だが、最終で興収10億円に届くかどうか。やや物足りない数字だが、この作品は中身や興行とは別のところにも注目して欲しい。映画の製作過程が従来の方法とはまるで違うのである。

 本作は、映画企画と若きクリエーターの発掘を目的としたコンペティション「TSUTAYAクリエーターズ・プログラム フィルム」から生み出された。

 審査方法もなかなか画期的で、出来上がった脚本ではなく、企画段階のシノプシス(あらすじ)などを吟味して決める。審査員はプロデューサーが務め、受賞企画には資金面などを含めた映画化のサポートが用意される。その第1回のグランプリ企画が「嘘を愛する女」であった。

 いまの邦画はベストセラー小説、人気コミックなどが原作となる場合が多く、オリジナル企画の映画化は少ない。ヒットさせるべく過度なマーケティング手法が蔓延しているからで、認知度がほぼ全くないオリジナル企画はあまり歓迎されない。もちろん、認知度は映画の製作にとって大切だが、そればかりが優先されるとマンネリ化する。事実、人気コミック原作が増えた昨年は、似たような作品ばかりが並んだこともあり、成果は低かった。その意味から、同プロジェクトは邦画製作の新展開として注目に値するのである。

 とはいえ、作品の中身についてひと言添えたい。サスペンス的な話の展開の割には謎の部分の底が浅いのだ。もっとも、何事もすぐに結果が出るわけではなく、邦画製作の新たな担い手がここから続々と出てくるかもしれない。主催のTSUTAYAには、すぐに採算を考えず粘り腰を見せてもらいたい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動