マンガ原作頼み邦画に一石 長澤まさみ最新作の挑戦的手法
長澤まさみ主演の「嘘を愛する女」が公開されている。04年の「世界の中心で、愛をさけぶ」以来となる長澤と高橋一生の共演も話題だが、最終で興収10億円に届くかどうか。やや物足りない数字だが、この作品は中身や興行とは別のところにも注目して欲しい。映画の製作過程が従来の方法とはまるで違うのである。
本作は、映画企画と若きクリエーターの発掘を目的としたコンペティション「TSUTAYAクリエーターズ・プログラム フィルム」から生み出された。
審査方法もなかなか画期的で、出来上がった脚本ではなく、企画段階のシノプシス(あらすじ)などを吟味して決める。審査員はプロデューサーが務め、受賞企画には資金面などを含めた映画化のサポートが用意される。その第1回のグランプリ企画が「嘘を愛する女」であった。
いまの邦画はベストセラー小説、人気コミックなどが原作となる場合が多く、オリジナル企画の映画化は少ない。ヒットさせるべく過度なマーケティング手法が蔓延しているからで、認知度がほぼ全くないオリジナル企画はあまり歓迎されない。もちろん、認知度は映画の製作にとって大切だが、そればかりが優先されるとマンネリ化する。事実、人気コミック原作が増えた昨年は、似たような作品ばかりが並んだこともあり、成果は低かった。その意味から、同プロジェクトは邦画製作の新展開として注目に値するのである。
とはいえ、作品の中身についてひと言添えたい。サスペンス的な話の展開の割には謎の部分の底が浅いのだ。もっとも、何事もすぐに結果が出るわけではなく、邦画製作の新たな担い手がここから続々と出てくるかもしれない。主催のTSUTAYAには、すぐに採算を考えず粘り腰を見せてもらいたい。