ジャッキー ファーストレディ 最後の使命(2016年、米、チリ、仏)
1963年11月22日、テキサス州ダラスで凶弾に倒れたジョン・F・ケネディ。ファーストレディーのジャッキーが記者のインタビューに応える形式で暗殺当日から葬儀までの怒濤の4日間の知られざる内幕がリアルに明かされる。
夫が大統領在任中、ジャッキーはホワイトハウスの内部をテレビで初公開。番組内で「美術品は人より長生きして歴史や美を語る」と語ったように、亡き夫が過去の人として忘れ去られることが許せず、夫が伝説となるよう奮闘する。
夫の血のりが付いたシャネルのスーツを着続けたまま激務に対応するシーンは凄まじくもあり、痛々しい。やがてスーツを脱ぎ、夫の肉片が付いていたことに気づき、泣きながらストッキングを脱ぐ姿は胸が痛む。
葬儀前日、強い女も突然の悲劇に打ちひしがれて、老齢の神父に胸の内を吐露。その彼女に返された言葉だ。
インタビュアーの記者には、「夫は完璧じゃなかったから大統領になれた。完璧な人間は変われない。夫は常に向上し、強くなっていった」と答えている。が、なだめられた神父はこう囁く。「永遠に答えなどないかもしれない……」と。神父を演じた名優ジョン・ハートは本作が遺作だ。
オスカー女優のナタリー・ポートマンは、まるでジャッキーが乗り移ったような迫真の演技がハマり役。オスカーにノミネートされたのも納得だろう。とにかく圧倒されるシーンの連続だ。