「クリード チャンプを継ぐ男」(2015年、米)
シルベスター・スタローンがつくり上げたロッキー像は、ボクシング映画の名キャラ。その第1作で戦った盟友アポロが愛人に産ませた子供アドニスは、父の思い出がなく、その面影を追いかけてプロボクサーの道へ。老いたロッキーをトレーナーに迎えてデビューする。
1ラウンドのゴングが鳴る瞬間、ロッキーが投げかけた言葉だ。初戦は2ラウンドKOだが、実は1ラウンドからワンシーンで撮っている。自分もまるでリング内にいるような錯覚を覚え、圧倒される。迫力満点のシーンの連続だ。
ロッキーシリーズのストーリーは、大人の夢物語なのだろう。が、「ファイナル」に至っては、50歳を過ぎてリングに上がるなど、ボクシングなのかプロレスなのか。でも、本作はいい意味でベタさが生きている。老いたロッキーが病魔と闘いながらアドニスを指導する姿は、現実味があり、感情移入しやすい。見応えがあるのは、監督&脚本を手掛けた黒人ライアン・クーグラーがしっかりロッキーを研究して、その魂を引き継ぎながら、原案を練り上げ、映像化しているからだろう。
彼は本作の後、マーベル映画で初の黒人ヒーロー「ブラックパンサー」を発表。世界的な大ヒットを収めている。ストーリーテリングがうまく、演出が丁寧かつスピーディー。ホント、今後が楽しみな作家だ。
間もなく公開される「クリード2」の脚本はスタローン。ベタな展開に戻らないことを祈るばかりだが、本作がすばらしいことは間違いない。