エル ELLE(2016年、仏国)
白昼堂々のレイプシーンから始まるサスペンスの主人公は、被害者の女社長。幼少時、連続殺人を犯した父と一緒に殺人現場にいたことから、警察を嫌い、通報せず、自ら犯人捜しを決意する。まさかその勇ましい行動が、内に秘める“魔性”のベールをはぐキッカケになろうとは……。
隣人のイケメンを窓から眺めながらオナニーしたり、過失を犯した部下に罰としてペニスを見せるよう強要したり。変態の限りを尽くす過程で、親友から「夫が浮気している」と告白される。続けざまに「帰宅後の夫のペニスに鼻をつけて、においを嗅いでやりたい」と。
今回のセリフはそれにうなずいた言葉。その浮気相手が本人だから、ムチャクチャだ。
全編通してセクハラが描かれているが、人間の本能が色濃く出ていて、官能的でありながら、ユーモアさえ感じるのは気のせいじゃない。ヒットメーカーのポール・バーホーベンがそう仕向けているのだ。
妖しいシーンに引き込まれ、危ないセックスをしたくなる。それも、知らない女性と。監督の過激な要求を体当たりで演じているのは、国際派女優のイザベル・ユペール。アブノーマルでも、テンポがよく、ポップ。フランス映画ながらアカデミー主演女優賞にノミネートされたのも当然だ。
監督は当初、ハリウッドで撮ろうとしたらしいが主役が見つからず、彼女に白羽の矢が。60代とは思えない迫真の演技で、情けない男も火がつくはずだ。