ジュピターズ・ムーン(2017年、ハンガリー、ドイツ)
シリア難民の少年アリアンは父と一緒にハンガリーを目指して逃亡。彼らが置かれた現状は、身につまされるような劣悪な状況の連続だ。本当にそんな状況なのか。カンヌで絶賛されたSFドラマは、冒頭から引き込まれる。
必死に走って国境に近づくが、父とはぐれた上、警備隊の違法銃撃により瀕死の重傷を負う。そのピンチで手に入れた不思議な能力が、空中浮遊だった。フワフワと舞う映像を映画館のスクリーンで見たら、本当に吸い込まれそうになるはず。高所恐怖症の身には正直、ゾッとした。
特殊能力に気づいた医師は、彼を利用して金儲けを企むが、自分の過失をもみ消したい警備隊の刑事に2人は追いつめられていく。
刑事からの逃亡劇は、リアルなカーチェイスを絡ませたりしながら、手に汗を握る展開だ。一昔前のハリウッド的なアクション映画に影響を受けたようなスリリングな映像は、CG映像を見慣れたボクにも新鮮で、目が離せない。
途中の駅爆破テロで少年とはぐれた医師は、救急車の中で刑事と話す。無神論者で粗暴な刑事に放った言葉だ。