トランプ関税ディール「次の一手」なのか…注目論文が示唆する「対日恐喝」シナリオ
世界が振り回されっぱなしだ。トランプ米大統領が9日午後、この日発動したばかりの「相互関税」の上乗せ部分について、対象の多くの国と地域に90日間の一時停止を発表。日本も含まれたことに金融市場は好感しているが、安心するのは早すぎる。次のシナリオの手がかりとして注目を集める論文があり、関税交渉は単なる通過点。本丸は為替と防衛の一体化交渉、最大のターゲットは同盟国・日本だ。
話題の論文は「国際貿易システム再構築のためのユーザーガイド」。昨年11月、トランプ再選直後に発表された。筆者は経済学者のスティーブン・ミラン氏。現在はホワイトハウスに迎え入れられ、トランプ直轄のブレーン集団・大統領経済諮問委員会のトップだ。
読み取れるのは、トランプ政権が描く「製造業復活」に向けた経済・外交戦略だ。無軌道にみえても、実は忠実に論文のシナリオに従っていることが、うかがえる。
ミラン論文は、過剰なドル高が米国の製造業を圧迫し、貿易赤字が膨らんでいると分析。解決策として、各国とのドル高是正の通貨協定「マールアラーゴ合意」の締結を求めた。フロリダ州にあるトランプの別荘にちなみ、1985年の「プラザ合意」によるドル安誘導を意識した名称だ。
驚くのは「懲罰的関税以降、貿易相手国が関税引き下げの見返りとして通貨協定にさらに受容的になるだろう」と記してあること。今回の相互関税は通貨交渉のテーブルに着かせるための布石。あくまで「本丸」はドル安容認というわけだ。
しかし、85年のプラザ合意時と現在は、状況が激変。当時は世界の政治・経済を主導していたG5=米、日、仏、西独、英の合意でコト足りたが、今や米国の貿易赤字国は中国、メキシコ、ユーロ圏、ベトナムと多岐にわたる。